「転職が当たり前になり、働き方が多様化する現代。次代を担うZ世代は、自身のキャリアについてどのように考えているのでしょうか?」
私たち株式会社風凜は、「”他人”の人生ではなく、”本当の自分”の人生を歩む人を増やす」というミッションのもと、大学生から社会人3年目までのZ世代の方々にお集まりいただき、「キャリア・働き方」をテーマにした座談会を開催しました。本レポートでは、「成長したい」という言葉の裏に隠された彼らの本音や、無意識のうちに抱える“リスク”への考え方など、座談会で語られたリアルな声をお届けします。
■今回の参加メンバー
今回の座談会には、様々なバックグラウンドを持つ大学生~若手社会人の計7名の方にご参加いただきました。
#1:「仕事選びの軸」。就活の時と今、どう違う?
まず、参加者がキャリアを歩み始めた「原点」である仕事選びの軸から、彼らのキャリア観の変遷を紐解きます。社会人経験を経て、その価値観はどのように変化したのでしょうか。
Cさん:環境重視から「やりがい・貢献」へ
「就活の時と今とで軸が大きく変わりました。当時は正直やりたいことがなく、社会人の仕事がどのようなものか分かるはずもないので、オファーいただいた企業から、人間関係や勤務地、服装の自由度といった表面的な部分で選んでいました(笑)
社会人3年目になった今は、仕事内容への解像度が上がったことで、『やりがい』や『社会にどれだけ貢献できるか』を重視するようになりました。自分にできることが増え、様々なことにやりがいを感じる中で、最も楽しいのは何かを考えた時、黙々と作業するよりチームを前に進めることだと感じ、今は管理職を目指しています」
Dさん(社会人2年目):「自分の影響力の広さ」がより大きな原動力に
「私も特にやりたいことはなく迷走していたのですが、アルバイトなどの活動で『○○のおかげで助かったよ、ありがとう』と感謝された時に一番やりがいを感じたので、『自分の影響力』を軸に就職先を見ていました。
大企業で歯車になる姿は『嫌だな』と感じ、それよりは小さな会社で裁量権を持って課題解決に挑む方が性に合っていると思ったんです。実際に働いてみると、逆に雑だと思うくらい任されすぎていますが(笑) これも自分の成長だと思いますし、何より楽しいです」
Bさん:独立のための「ワークライフバランス」
「私は就活時、『自分も納得でき、社会のためになって意味があるか』『将来の選択肢の幅が確保できるか』を見ていました。将来的に必要なスキルとして、まず営業職に就いた形です。
働く中で、会社だけの時間に人生を費やすのではなく、本を読んだり人に会ったりして自分の知識を広げることが、人生全体にとって大事だと考えるようになり、『ワークライフバランス』を重視するようになりました。なので、将来は独立するための勉強時間を確保できる環境が欲しく、最近土日休みで残業の少ない別の営業職に転職しました。」
ここで、学生の方から社会人の方へ質問が・・・
Q.「やりたいこと」vs「将来性」、どう決める?
Gさん(学生):「出版のような斜陽産業と言われる業界に興味がある一方、将来性のあるITも気になります。この天秤のかけ方はどうしたらいいんでしょう?」
Bさん(社会人):「私もアパレルで悩みました。その中で、一度アパレルじゃない業界から、アパレル企業に対してアプローチする道もあるなと 。例えば、ITの力でアパレル業界をDX化する、とか。斜陽産業だからこそ、外から変えられるチャンスがあると思います」
【議論からのインサイト】「やりがい」の本質は、社会への影響力
社会人経験を経て、彼らの仕事選びの軸は、勤務地や待遇といった「環境」から、より本質的な「やりがい」へと移行している様子が明確に見て取れました。
これは単に仕事に慣れ考える余裕ができたからではなく、自らの働きが社会とどう繋がり、どのような影響を与えるのかを実感したことで、より大きな手応えを求めるようになったことも関係しているのではないでしょうか。
特に、インフルエンサーのように個人が社会に影響力を持つ時代背景も相まって、「自分の手で何かを成し遂げたい」という欲求は、Z世代の強い特徴なのかもしれません 。その証拠に、参加者のほとんどが「成長のためであれば残業は厭わない」と回答しており、それぞれの形で「やりがい=社会への影響力」を求め、その実現に必要な成長環境を貪欲に追い求める姿勢が垣間見えました 。
#2:Z世代の傾向チェック。「リスク回避志向」は本当?
Z世代は、「失敗を許容しにくく、現実主義的なリスク回避志向が強い」と言われることがあります。キャリアや成長への関心が高い今回の参加者にも、その傾向は当てはまるのでしょうか?
参加者の皆様には、事前に仕事に関わらず日常も含めたリスク回避志向を測るアンケートにお答えいただきました。
Aさん(社会人):「質問4のコストパフォーマンスやタイムパフォーマンスに関連する事として、「無駄なこと」としてしまうと自分自身が否定されているようでとても嫌だと感じます。だからこそ、どんな経験も、結局は今の自分に繋がっていると思いたいです。」
特に「成長」に関する質問として、「自分の得意なことや専門性を磨くことが、将来にわたって自分を守る上で重要だと考えている。」について、「そう思わない」と回答した方の意見を聞いてみました。
Fさん(学生): 一つの専門性に絞ることへのリスク
「今、就職活動で人事の方などから『変化対応力』が重要だとすごく言われます。AIの台頭のように、環境が激しく変化する中で一つの専門性に絞ってしまうと、将来その専門性が不要になった時に困るのではないか、と。だからこそ、多角的な視点を持つ万能な人材(オールラウンダー)を目指すべきではないかと考えています」(その他の学生さんも同様の意見との回答)
Aさん(社会人): 専門性の「掛け算」で自分を守る
「学生時代、周りに公認会計士のような難関資格を目指す人が多くいた時、一つの道を極めることの限界を感じました。だから私は、例えば『人事の経験 × ITの知識』のように、複数の武器を掛け合わせることで独自の価値を持つジェネラリストを目指しています。得意なことを増やし、掛け算していく方が、これからの時代を生き抜く上で自分を守ることになると考えています」
【議論からのインサイト】リスク回避から生まれる、キャリア戦略としての「掛け算」
アンケート結果こそ参加者によって様々でしたが、議論を深めると、おおよその方が将来へのリスクを強く意識していることが分かりました 。そして同時に、彼らはただ漠然と不安を抱えるのではなくリスクを乗り越えるための“自分なりの戦略”を模索し続けている事がうかがえました。
その中でも特に象徴的だったのが、Aさんや#1でのBさんの発言にあった「掛け算」の発想です 。これは、単一のスキルに依存するリスクを避けつつ、複数の専門性を組み合わせることで独自のポジションを築こうとする、極めて戦略的なキャリア観です。「安定したい(守り)」と「やりたいことを追求したい(攻め)」という、一見矛盾する二つの欲求を両立させるための、Z世代ならではの現実的な解の一つなのだと思われます。
■#3:私たちは「何のために成長するのか?」
ここまでの議論から、参加者たちが将来を真剣に見据えていることが伺えました。そこで最後に、彼らの成長意欲の根源にあるもの、その本質に迫りました。
ファシリテーター 石田: 私たちは、普段、多くのリスクが見える環境で過ごしています。特に、私たちの世代は「現実主義的なリスク回避志向」が強い世代と言われています。そんな皆さんに改めてお聞きします。
内省の時間を取った後、この問いに「当てはまる」と答えたのは7名中5名。多くの参加者が、自らの成長意欲の根底に「不安」があると回答しました。
【「当てはまる」と答えた方の意見】
Aさん(社会人):「挑戦して自分の幅を広げないと、将来社会から必要とされなくなるのではないか、という不安があります。だからこそ、裁量の大きい仕事に挑戦しているという側面はあります。仕事で採用なども担当していると、『こんなすごい人がいるのか』と思う事も多く、そこと比較すると(このままでは)社会に選んでもらえないのではないかと、とても不安になります。そうならないために、できることを増やしておきたい。それが私にとっての挑戦であり、成長だと思っています」
Dさん(社会人):「今思うと、「自分はきちんと成長できているのだろうか」という不安は常にあります。その不安を打ち消すために、今の仕事が『楽しい』と思い込もうとしている自分もいるかもしれません・・・」
【そうではないと答えた方の意見】
Cさん(社会人):「この問いを出されるまで成長したいっていうのに対して「不安を回避するため」っていう考え自体がなかったので、そういう考え方もあるんだ…って驚いてます。」
【議論からのインサイト】「手段」の前に、まず「目的」を見つめ直す
議論を通じて浮かび上がったのは、参加者たちが「どう成長するか(手段)」については活発に語る一方で、「なぜ成長したいのか(目的)」については議論に上がらないという事実です。「言われてみれば、確かに…」という彼らの反応は、多くのZ世代に共通するインサイトかもしれません 。
成長のために、専門性を磨くか、ジェネラリストを目指すか。そうした「手段」の選択に駆り立てられる前に、一度立ち止まり、自らの成長の「目的」を問い直してみる。
「成長“しなければ”」なのか「成長“したい”」のか。あなたの「成長」はどちらでしょうか?
■本座談会のまとめ
今回の座談会で見えてきたZ世代の以下の2つの側面でした。
彼らは二つの感情を抱え、独自の戦略でキャリアを築いています。何かと自分の意志を問われる今の時代、つい周りと比較して「自分らしさ」に焦りを感じてしまう時、一度この問いに立ち返ってみてください。
「なぜ、成長したいのか?」
「○○しないように」という“守り”の思考よりも、「○○したいから」という“攻め”の思考になることで、キャリアはより豊かで主体的なものに変わります。
重要なのは、はじめから「○○したいから」を追わなくても良いという事です。
キャリアの出発点は、「社会から取り残されないように」といった「守りの思考」で構いません。それは変化の激しい時代を生き抜くための、現実的で力強いエネルギーになります。重要なのは、その「守り」から始まった行動と経験が、やがて仕事への解像度を高め、「この人のようになりたい」という憧れ、すなわち「攻めの思考」へと自然に動機を昇華させていく活動です。
かつて就職活動の軸が変化したように、キャリアの目的もまた、経験とともに進化し続けるのです。
キャリアプランをあらかじめ厳密に固める「探してから進む」アプローチだけでなく、まずは一歩を踏み出す。「進みながら探していく」という視点で、ご自身のポジティブな成長の目的を焦らずに見つけてみてはいかがでしょうか。
■さいごに
座談会の最後には、参加した学生から「ガチガチにキャリアを固めなくてもいいんだと安心した」「悩んでいたことが解消され、前向きな気持ちになれた」といった感想が寄せられました。
今回の座談会が、参加者の皆さんにとって、そしてこの記事を読んでくださったあなたにとって、自身のキャリアを前向きに捉える一つのきっかけになれば幸いです。
ご参加者の皆様、この度は誠にありがとうございました。
今後も「働き方」に関する座談会を実施していく所存ですので、ご興味のある方はぜひ広報担当のSNSをチェックください! (公式SNSはこちら:https://x.com/yukari_k_fuurin)
―――
座談会後は皆さんで美味しいお弁当をいただきました!